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学生協働ワークショップに参加しました

 2015年9月16日に早稲田大学で開催された「学生協働ワークショップ in 東京 2015 」に参加しました。ACSの活動を他大学の方々に紹介し、また他大学での様々な活動を知ることができました。このレポートでは、当日の流れに沿って各プログラムを紹介しつつ、私が考えたことも少しずつ絡めて語っていこうと思います。

 

 このワークショップ は、大学図書館において急速に広まっている「学生協働」について、東京近辺の事例を参集し、より多くの学生と図書館員がお互いの活動について情報共有し、自らの取組みをさらに活性化することを目指すものです。西日本で開催されている大学図書館学生協働交流シンポジウムに触発されて2014年に第1回が開催され、今回が2回目の実施です。関東の15大学から学生協働団体17団体が参加しました。

 東京大学からはACSである私と若林智章さん、教職員の方2名というメンバーで参加しました。会場は早稲田大学の国際会議場です。正面にそびえる大階段に圧倒されます。時間があったので、同じ建物内にある中央図書館を見学。広い空間にたくさんの本と勉強机がある、居心地の良さそうな空間でした。

 

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 いよいよワークショップ本番! まずは、参加団体のうち5団体の口頭発表から始まります。ここでは我々東大は聞き役に徹しました。

 大学図書館の学生協働団体といってもその活動形態は様々です。本ワークショップでは、おもに学生に対する学習支援を行う団体を「ピアサポート」、それ以外の団体を「図書館サポート」と呼び分けます。口頭発表では、ピアサポート・図書館サポートそれぞれの特徴ある活動内容を知ることができました。

 ピアサポート団体として発表を行ったのは東京学芸大学とお茶の水女子大学(LALA)でした。両団体の活動は、図書館に学習相談コーナーを設け、大学院生が学部生の学習相談に対応する、というものです。

 図書館サポート団体は、ピアサポート団体以上に独自色が強く出ています。跡見学園女子大学は、図書館所蔵の百人一首コレクションの紹介と図書館ボランティアかるた部会の活動を通じて、図書館利用率の向上を目指しています。お茶の水女子大学(LiSA)は、図書館職員の補助や図書館を利用する学生へのサービスを積極的に行っています。早稲田大学は、図書館の活用方法を広く知ってもらうために企画した脱出ゲームについて紹介していました。脱出ゲームのような謎解きイベントは全国の大学図書館で開催されるようになりましたが、その中でも早稲田大学のイベントは、丁寧に設計された本格的な企画でした!

 

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 次は参加団体のポスター発表です。各団体が一堂に会し、それぞれの活動を紹介しました。東大のポスターの前も人が途切れず、様々な質問をいただきました。新図書館計画そのもの、新館に建設予定のライブラリープラザ、ACSが特に力を入れて取り組んでいるミニレクチャプログラム、etc…。

 今回のワークショップでも山口のシンポジウムでも、特にミニレクチャについての質問が多いように感じました。そもそも全国の学生協働団体は、学生への学習支援や大学図書館利用者へのサービス向上を活動目的にしている団体が圧倒的に多いのです。その中で、東大ACSの、大学図書館の再構想に学生の立場から参画するという活動形態は非常に目立ちます。加えて、大学図書館に求められる新たな役割である大学教育との連携という面から見ると、大学院生が参加型の講義を行いアクティヴな学びの場となっているミニレクチャは、他団体が学生による学習相談やセミナー開催などの活動を多く紹介するのと比較して、とてもユニークに映るのでしょう。

 

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 更に、参加学生全員でグループワークを行いました。5-6名の班を作り、テーマに沿ってディスカッションし、内容をポスターにまとめて発表しました。

 私の班のテーマは「学生ならではの視点・強みを生かした、より良い図書館づくり」でした。そもそも「学生ならでは」とは何か?から議論がスタートし、図書館の秩序を保つ職員と、実際の利用者であり好き勝手に要望を述べることができる学生、という対比の構図を見出しました。では図書館に学生が求めることを好き勝手に述べてみると… ①本を読む場(静かさ・資料の入手しやすさ) ②話し合う場(学習サポートやイベント・情報交換) ③くつろぎの場(飲食・利用マナーの向上)という3点に落ち着きました。実際、図書館には様々な課題があります。東大ではあまり聞きませんが、他大の図書館では学生が飲食ごみを放置したり、大きな声のおしゃべりが問題になったりしているそうです。また、同じ大学の他キャンパスからの資料取り寄せにとても時間がかかる、ラーニングコモンズを作りたいが場所がない、などの悩みも出ました。そして、職員の方は図書館の課題を知りつつも、予算などの現実的制約をよくわかっているがゆえに解決に向けて動くことができずにいるのではないか、とも推測しました。以上のような図書館の課題に対して、自由に意見を言える学生の立場から声を上げ、職員と一緒に試行錯誤しながら改善・解決し、図書館利用のハードルを下げていくことこそが、班のテーマの「学生ならではの視点・強みを生か」すことではないか、と結論付けました。…何とか結論まで導くことができましたが、議論がとても楽しく盛り上がったので、正直もっと時間が欲しかったです。他班の発表も同じテーマなのに結論が違っていたりして、興味深いものでした。

 最後は学生・引率職員の全員で懇親会です。図書館のこと、普段の学生生活のこと、他愛もないこと、いろいろな話題で盛り上がりました。

 

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 図書館に関わる方々との交流で実感したのは、皆さんの共通にして最大の悩みはやはり「図書館利用者を増やしたい」ということでした。ピアサポート団体も図書館サポート団体も、広報活動や本の展示を工夫したり、セミナーや大規模なイベントを開催したりと、それぞれ努力を続けています。徐々に利用者が増加してきた図書館もあれば、まだ十分な成果に結びついていない図書館も多いようです。今回のグループディスカッションでも利用者増につながる画期的なアイディアはなく、各大学の取組みを互いに教え合って地道に努力していこう、という雰囲気でした。東大ACSでは図書館利用者増加に向けた取り組みは行っていませんが、そのような努力と無縁かといえばそうではなく、ミニレクチャの参加者増加を目指して毎回試行錯誤を繰り返しています。

 この課題に対するひとつの理想的解答として、山口のシンポジウムでも紹介されていた、帝京大学メディアライブラリーの共読ライブラリーを挙げたいと思います。共読ライブラリーとは帝京大学の全学的な統合型読書推進プログラムで、専用の広い書架、学生サポーター、学部教育と連動した読書術プログラム、地域・書店・企業とのコラボなど、各方面と連携し多彩に展開する巨大プロジェクトです。始動して3年半が経つ現在、図書館利用者増という目標を達成し、図書館業界で大きな注目を集めています。

 このプロジェクトを真似ることは容易ではありませんが、ここから学び取れる「たくさんのひとを巻き込め!」という教訓は、どの団体でも実践できることだと思います。学生や大学教員など立場の異なる人々が関与し、情報や経験を共有し、その価値や効果が参加者の周囲に波及していく。魅力を感じた人々が更に集まり、加速していく。ひとを巻き込みながら発展的循環のサイクルをぐんぐん回すことは、予算がなくても場所が限られていても、情熱さえあれば誰でも出来ることでしょう。かくいう私も、巻き込まれた一人なのですから。

 

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 昔の私が思っていたように、図書館といえば学校の片隅に・街の一角に静かに佇んでいる、という印象を持っている方が大多数だと思います。そのような影の薄い(と思われていた)図書館ですが、今年は公共図書館の民間委託の一件でにわかに脚光を浴び、公共図書館とはどうあるべきなのか、全国的な議論が巻き起こりました。この一件は予算が削減される図書館の厳しい現実を浮き彫りにしましたが、図書館の存在意義を多くの方に知らしめたことで、徐々に高まりつつある図書館変革の機運を加速させるチャンスにもなりうるのではないかと思います。そして、図書館とは独立した学生の立場から図書館に関わる我々ACSはいま何が出来るのか。それは、自分達が活動を楽しみ、一つ一つの企画を面白いもの・わくわくするものに仕上げ、次の年へ確実にバトンを渡していくこと。それが結果的に多くの人を巻き込み、新図書館計画や学生協働を盛り上げ、図書館の変革を加速させていくのでしょう。そう結論づけて、私は軽やかな足取りでワークショップ会場を後にしたのでした。

 

レポート執筆:幸田理恵

 

*学生協働ワークショップ in 東京 2015 http://www.wul.waseda.ac.jp/CLIB/gakuseikyodo2015.html

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